折立から三角点までは特に見所もなく、樹林の中の道を淡々と進む。三角点を過ぎると展望が開けて、前方には稜線が、背後には有峰湖が見え始める。紅葉にはまだ早いようで、木々は少し色づき始めた程度。
なかなかよいペースで太郎平に到着。水晶、鷲羽、三俣蓮華に黒部五郎と山座同定を楽しんだ後は、薬師沢小屋まで400mの下り。薬師沢出合を過ぎてからは、薬師岳東南尾根方面の山肌の黄葉が目を楽しませてくれる。
歩き飽きた頃に薬師沢小屋に到着。吊り橋の右手から入渓。いよいよ黒部川の遡行だ。源流部ではあるが、紀伊半島の感覚で言えば川幅も水量も本流レベルに近い。始めは川原を歩くが、やがて側壁が立った箇所が現れ、ヘツリや巻き、渡渉を交えての遡行となる。源流部でこの水流。上の廊下の遡行は、さぞかし厳しいものなのだろう。
やがて赤木沢との出合に到着。出合にあるエメラルド・グリーンの淵は、これから始まる美渓のプロローグに相応しい。ここからは支流の遡行となるため、いつも登り慣れている程度の水量となる。次々と滝やナメが現れるがこれといった悪場もなく、楽しく快適な遡行が続く。頭上に木々がない解放感は雪国の沢ならでは。
階段状の滝を快適にこなすと、沢の奥に岩壁が見える。岩肌と周囲の紅葉とのコントラストが秀逸。この岩壁にかかる落差35m、赤木沢最大の滝は、左岸のガリー伝いに巻く。つい先日、この高巻きで死亡事故が起きたらしい。
奥の二股を過ぎるといよいよ水量は減って、赤木沢も最終章と言ったところ。振り返れば、昨日よりも明らかに彩度の増した紅葉の風景が。ついには水も涸れてガレの中の登りとなり、更には草の斜面の詰めとなる。夏はお花畑の中の詰めらしいが、黄色く色づいた草の中の詰めもよいものだ。
最後は赤木岳すぐ南の鞍部に飛び出し、遡行終了。縦走路を目で追うと、その先には黒部五郎の圏谷が間近に見える。あとは太郎平まで稜線歩き。黒部五郎の横に見えていた槍は、始めは穂先だけだったが、北ノ俣岳に向って登るにつれて、やがて槍の肩まで見えるようになる。眼下の赤木平も赤・黄・緑のまだらで美しい。池塘が現れ始めると太郎平まではもう一息。でも意外と時間がかかったな、というのが実感。
残すは折立までの下り。登ってくる人もおらず、天気もイマイチで、薄ら寂しい感じ。三角点から折立までの樹林帯の下りでは、ウルシ(?)の見事な赤や、巨木の根っこが目を和ませてくれた。前を行くパーティーに追いついて程なく折立に到着。普段と比べると行動時間の長い山行だったが、雨に降られる前に下山することができた。
その後、有峰林道の下りで雨がポツリポツリ。車で降られるのは一向に構わない。ゲートからすぐの国民宿舎 白樺ハイツで温泉に浸かった後は、富山の駅ビルで白エビ丼(ウマ〜)。あとは、大雨の北陸道と名神を抜けて帰神。
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